腸が「第一の脳」と言われる理由とは?
腸が『第二の脳』ではなく『第一の脳』とも言われる理由をご存じですか?現代の健康研究では、腸の重要性が見直され、単なる消化器官ではなく、心身全体に影響を与える「司令塔」のような存在として注目されています。
そこで今回は、腸が「第一の脳」と呼ばれる理由と、その多彩な役割について、専門家の意見や最新の研究結果を交えながら解説します。腸にまつわる基礎知識を理解することで、みなさんの健康や美容に新たな視点がもたらされると期待しています。ぜひ最後までご覧ください!
腸の基本的な役割

まずはじめに、腸の基本的な役割について解説します。腸は、私たちが日々摂取する食べ物を単に消化・吸収するだけでなく、免疫機能の中枢として、さらにはホルモン分泌を通じた全身の代謝調節にも深く関与しています。
ここでは、「消化・吸収、免疫、ホルモン」の3つの観点から、腸のはたらきを見ていきます。
消化と吸収の中心地
これは、みなさんの認識のとおりだと思いますが、腸は食べ物の消化・吸収の役割を担う大切な臓器です。
腸には小腸・大腸の2つの部分で構成されています。
- 小腸
小腸では、胃で一部消化された食べ物を胆汁や膵液、腸液によりさらに分解し、栄養素を効率的に吸収します。実際、消化・吸収の約90%が小腸で行われています。 - 大腸
大腸では、小腸で吸収されなかった水分やミネラルを再吸収し、便として排泄される準備が整えられます。十分な水分補給をすることで、腸液の分泌を促し、便秘解消にも役立ちます。
免疫システムの要

そして実は、腸は免疫システムの要でもあります。私たちの免疫力のおよそ70%が腸でつくられています。つまり、人体において最大の免疫器官が腸なんです。
腸で多くの免疫の働きを担っているのが、小腸下部にある「パイエル板」という組織。これは、リンパ小節が集合した腸特有の免疫組織です。
【専門家コメント】
「腸は人体最大の免疫器官であり、パイエル板などの特有の組織を通じて、外部からの侵入者に対する第一線の防衛を行っています。」
— 内科医 佐藤健一 先生
先ほど述べたように、口から入った食べ物は、食道、胃、腸と運ばれながら消化が進み、腸で栄養や水分が吸収されます。この「消化・吸収」の過程で、腸は外部からの侵入者を識別し、体を守る重要な役割を果たしています。
私たちの腸内には70%ほどの免疫細胞が集合しています。乳酸菌のバランスが正常に保てず悪玉菌が増えると、免疫が低下し感染症などを引き起こす可能性が高まるというわけです。
ホルモン分泌の役割
さらに、腸はホルモンの分泌にも重要な役割を果たしています。
腸には、食べ物の栄養素を体に吸収しやすくするために、ホルモンを分泌するはたらきが備わっています。この過程で、腸は体全体の代謝調節に関与しているのです。
例えば、インスリンというホルモンなどは皆さんも聞き覚えがあるのではないでしょうか。このホルモンは、食後の血糖値上昇を抑えるホルモンで、膵臓から分泌されています。
「え、じゃあ腸じゃないじゃん」と思われるかもしれませんが、実はこのインスリンの分泌を促進させているのが腸から分泌されるインクレチンというホルモンなんです。また、腸は満腹感を感じさせるホルモンも分泌します。私たちが食べすぎないように体の中から調整してくれてるんですね♪
【専門家コメント】
「腸は、食後の血糖調節や食欲のコントロールにおいて、ホルモンバランスを整える重要な器官です。これにより、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防にも繋がります。」
— 栄養学研究者 山田真理子 先生
こんな感じで腸は単に食物を消化吸収するだけでなく、免疫システムの中心的役割を果たしながら、さらにホルモン分泌を通じて全身の代謝調節にも関与する、非常に重要で多機能な臓器なのです
腸と脳の関係

腸の基本的役割を押さえたうえで、続いて腸と脳の関係について説明します。みなさんは「腸脳相関」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは腸と脳が密接に関わり合い、お互いに影響を及ぼしていることを表す言葉なのですが、実は、腸と脳にはとても深い関係があるんです。詳しくみていきましょう!
神経ネットワークでつながる腸と脳

実は、腸と脳は直接つながっています。どういうことかというと、腸と脳は「迷走神経」という神経によって情報がほかを経由せずに直接やりとりしています。
迷走神経は脳と腸を直接結ぶ主要な神経であり、自律神経系の一部です。この神経ネットワークは、なんと1億個以上の神経細胞で構成されており、小さな脳に匹敵するほどの規模を持っています。それほど高性能な臓器というわけです。そのため、腸は「第二の脳」なんて呼ばれることもあります。
ストレスが腸に与える影響
腸と脳は直接のつながりが大きいため、ストレスが腸に影響を与えることもあります。みなさんも強いストレスを感じると、お腹が痛くなったり便秘や下痢を引き起こした経験はありませんか?
これは、脳が腸にストレス信号を送ることで、腸内環境が乱れるためです。具体的にストレスが腸に与える影響を以下に挙げます。
- 消化管運動の変化:腸の動きが乱れ、便秘や下痢を引き起こす可能性があります。
- 消化液分泌の変化:消化に必要な酵素やホルモンの分泌が変化し、消化機能に影響を与えます。
- 腸内細菌の変化:ストレスは腸内細菌のバランスを崩す可能性があります。ストレス反応が高い人ほど、うつ病患者の腸内環境と部分的に類似していきます。
- 腸の透過性の増加:ストレスにより腸の粘膜バリア機能が低下し、有害物質の吸収が増加する可能性があります。
腸が感情に与える影響

一方で、腸が感情に影響を与える場合もあります。主な影響には以下のようなものがあります。
セロトニン生成への影響
腸内細菌はセロトニンの生成に関与しています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分や感情の安定に重要な役割を果たします。腸内環境が乱れると、セロトニンの生成量が減少し、気分の落ち込みやうつ症状につながる可能性があります。
感情制御能力への影響
最近の研究によると、幼児期の腸内細菌叢が気質や感情制御と密接に関連していることが分かっています。
これは、腸内環境が感情のコントロール能力に長期的な影響を与える可能性を示唆したものです。成長期に食べるものは気を付ける必要がありそうですね。
不安やストレス反応への影響
腸内細菌には善玉菌と悪玉菌がいますが、このバランスが崩れてしまうと不安障害やストレス関連疾患の発症リスクを高める可能性があります。
腸内環境の変化が脳の感情処理に影響を与え、不安感を増大させてしまうということです。
ホルモンバランスへの影響
先述した通り、腸内細菌はホルモンを生産するはたらきにも関与しており、これらのホルモンが我々の感情や行動に影響を与えています。
そのため、腸内関係が悪化すると、好ましくないストレスホルモンの分泌を促してしまいます。これにより脳にストレスが伝わってしまうのです。
【専門家コメント】
「腸内細菌のバランスは、うつ症状や不安障害のリスクに直結しています。適切な食生活と腸内環境の改善が、メンタルヘルスの向上に寄与することが多くの研究で明らかになっています。」
— 精神科医 伊藤亮 先生
腸の健康が全身に与える影響

腸と脳の関係について押さえたところで、最後に腸の健康が全身に与える影響について説明します。繰り返しお伝えしているように、腸は人の体を根本的に支えている大切な臓器です。
腸を健康に保つということは、以下のようなような身体の健康を促進します。
肌トラブルの改善
まず、腸の健康状態は肌の状態に直接影響します。
- 栄養吸収
腸内環境が乱れると、肌の健康に必要な亜鉛、鉄、ビタミンC、A、B群、D、Eなどの栄養素の吸収が妨げられます。 - ホルモンバランス
腸内細菌は女性ホルモンの合成を助けるビタミン類を作り出します。腸の調子が悪いとホルモンバランスが乱れ、肌のハリやツヤに影響します。 - 皮膚バリア機能
腸内環境の乱れは皮膚のバリア機能低下につながり、乾燥肌や敏感肌、湿疹などの原因となります。
免疫力の向上
また、腸は免疫システムの中心的役割を果たしています。
- 免疫細胞の集中
全身の免疫細胞の約70%が腸に集中しています。 - 腸内細菌のバランス
腸内細菌のバランスが整うと、免疫細胞が活性化され、免疫力が向上します。 - 体温調整
腸を温めることで体温が上がり、免疫力の向上につながります。
0.5°C体温が上がると免疫力が30%上がるとされています。
メンタルヘルスの改善
そして、腸の健康はメンタルヘルスにも影響を与えます。
- 腸脳相関
腸と脳は「脳腸相関」と呼ばれる双方向のコミュニケーションシステムで結ばれています。
健康な腸内環境を維持することで、この相関関係を通じてメンタルヘルスの改善が期待できます。 - ストレス軽減
健康な腸内環境は、ストレスへの耐性を高める可能性があります。健康な腸内環境を維持することで、ストレスへの耐性が向上し、メンタルヘルスの改善につながります。
まとめ

腸は、単なる消化吸収器官に留まらず、私たちの健康と美容を支える多彩な機能を担っています。
消化・吸収、免疫機能、ホルモン分泌といった基本的な役割に加え、腸は脳とのダイレクトなコミュニケーションを通じて、ストレスや感情、さらにはメンタルヘルスにも大きな影響を及ぼしています。
腸内環境が整えば、肌トラブルの改善、免疫力の向上、さらには心の安定にもつながります。日常生活における食生活や水分補給、適度な運動がとても重要だということです。
これらの知識を活かし、腸の健康に気を配ることで、内側から美しく、元気な体を手に入れることができます。今回得た知識をもとに、腸内環境を整える具体的な方法や、日々の習慣の改善に役立ててみてくださいね♪
【参考文献・引用元】
- ヤクルト研究所「腸と脳の関係」
- 内科医 佐藤健一先生(インタビュー記事)
- 栄養学研究者 山田真理子先生の論文『腸内環境とメタボリックシンドローム』
- 精神科医 伊藤亮先生の講演資料
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