「夢がない」のは、子どものせいじゃない

「みんなは将来の夢ってなんかあるの?」

教員をしていた3年間、僕は何度もこの質問をした。 そしてそのたびに、困った顔をする子と目が合った。

「んー。特にないです」
「趣味とかないんですよね」
「なんでもいいです」

特になりたい職業もない。
思いつかないからとりあえずYouTuberって書いてみる。
あとはスポーツ選手とか花屋さんとか、公務員とか。

そういう子が、想像していたよりずっと多かった。

小学生だけの話じゃない。中学生や、高校生と話していてもそういう子は多い。
自分もそうだった。 やりたいことがわからない。

教室を出て、おにぎり屋になった今も、子どもたちと接する機会はある。
その空気は、あの頃とあまり変わっていないように思う。

もしかしたら、この記事を読んでくれている方のなかにも、 お子さんを見ていて、ふとこんなことを思ったことがあるかもしれない。

「うちの子、夢中になれるものないのかな」って。

目次

夢がないのは、子どもが悪いのか

結論から言うと、僕はそうは思わない。

だって、あの質問って、よく考えるとけっこう無茶なことを聞いている。

まだ世界のほんの一部しか見ていない子どもに、 「この先ずっとやりたいことを、今ここで言葉にして」と迫っているようなものだから。

そもそも、夢って探して見つかるものなんだっけ。

僕はここで一度、自分に聞いてみたことがある。 じゃあ大人の自分はどうなのか、と。

僕の夢の変遷

ここで少し自分語りをさせてください。
遠回りに見えるかもしれないけど、この話が今日いちばん伝えたいことにつながります。

小学生

僕が小学生のときの夢は、サッカー選手
全国のサッカー少年たちが抱く、定番の夢。

その夢は中学生になったあたりで「あ、これ僕には無理だ」と感じ始め、早々に挫折。笑
でも当時からサッカーが大好きで、今でも社会人フットサルに参加したり、サッカー観戦をしたりもしている。

中学生

中学生のときの夢は、学校の先生
小学校のときに出会った先生が大好きで、自分もあんな先生になってみたいと思った。
そして小さい子の面倒を見るのが好きだったので、保育士などにも興味があった。中学二年生の職場体験では、近くの保育園へ体験に行った。

高校生

高校生になると、その夢はなんとなく薄れ始め、特にやりたいこととかなかった。

ある日、学校の学習過程で「テーマを一つ決めて、その事柄についてインターネットで調べ、まとめた上で発表する」という授業があった。

当時、生物の授業が楽しかったこともあって、僕は「日本の絶滅危惧種に認定されている生き物」について調べることにした。

これがすごく楽しかった。
ニホンオオカミやトキが、絶滅する前はどんな生き物だったのか。
実は野生のメダカは絶滅しそう。
ツキノワグマはなぜ数が減っているのか。

とかとか。

この授業を終えて、「僕がやりたいことってこれかも」と感じ、絶滅危惧種の生き物の生態系を保護する仕事がしたいと思った僕は、生物資源科学部という生態環境が学べる大学へと進学した。

大学生

大学に入ると、勉強よりもサークル活動やバイト、遊びの方が楽しくなってしまった。

同じ学部の卒業生たちの進路を見てみると、ほとんどが中小企業への就職、または大学院への進学だった。

「僕がやりたいのはそういうことじゃない」と感じた僕は、教授の研究室に相談しに行った。
「生態を保護する仕事がしたいんだけど、どういう場所に進めばいいですか?」

すると教授は
「環境省みたいなところに入って、そういう仕事に携わるか、大学院の研究室でそういう研究をするかのどっちかじゃないか」と答えた。

世の中のことなんて何も知らない僕は、そういうものなのかとその言葉を真に受けるしかできなかった。

「研究室みたいなところに篭るしかないのなら、その仕事は向いてないな」

そうして僕はまた将来の夢を失った。

ただ、今になって思う。
あのとき、教授以外の大人にも聞いてみればよかった。

大人ひとりの答えを真に受けて、僕は自分で選択肢をひとつ閉じてしまった。
子どもの世界が狭いというのは、たぶんこういうことなんだと思う。

オーストラリア留学

夢を見失った僕は、サークル、バイト、遊び、ときどき授業な日々を惰性で送り、ぼーっと生きていた。

そんななか、大学の友達が海外留学しているのを見て、僕もちょっと行ってみようかなという気持ちになった。

いま自分には時間がたっぷりある。
そして幸いにも、バイトに明け暮れてたせいで、貯蓄もちょっとだけある。

僕は1ヶ月だけオーストラリアのブリスベンへ語学留学することにした。

ブリスベンには、日本人がたくさんいた。
自分と同じ学生もいたけど、仕事を辞めてワーホリや長期留学で来ているという人のほうが多かった。

そこでたまたま出会って仲良くなった人が元教員だった。

その人といろんな話をするなかで僕は、少しずつ先生という職業に興味を持ち始め、留学から帰る頃には「先生になる!」と決意していた。

帰国してからは、新たに学童でのバイトを始め、みんなが就活してる間に3つのバイトを掛け持ちし、毎日働いた。
そのお金で、佛教大学の通信課程に進学し、教員免許を取った。
それが、僕の社会人のスタートだった。


教員になってからのことはこれまで何度か書いてきたので今回は割愛。
長くなってしまったし。

僕も、探して見つけたわけじゃなかった

教員を辞めたときも、僕の手元には何もなかった。

教員を辞めるときに職員室でみんなの前で話したのは、「子どもたちが自然体験できるようなフィールドを作れたら」なんて言った記憶がある。

ただ、やりたいことが明確にあって辞めたわけじゃない。
実家がお米屋だったから、おにぎりを作って売ってみようと思った。

ほんとにそれだけのふわっとした理由だった。
最初なんて、お店屋さんごっこみたいなものだったと思う。

でも、やってみたら、いろんなことが見えてきた。

お米のことをもっと知りたくなって、全国を回る旅にも出た。
いろんな農家さんのとこへ遊びに行ったりもしたし、いろんな場所でおにぎり提供させてもらったりもした。

その旅の途中で、いろんな土地の、いろんな品種のお米を食べた。 そして最後にたどり着いたのは、 「品種よりも、その土地で育ったお米をその土地で食べるのが一番おいしい」という自分なりの答えだった。

これは、旅に出たからこそ感じることのできた答えだと思う。

いろんな場所に行き、いろんな人と話し、いろんな景色を見たから見つかった。

夢は、行動の後についてくる

こうして並べてみて、あらためて気づいたことがある。

僕の夢は、ひとつも自分の頭の中から出てきていない。

サッカー選手は、まわりのみんながやっていたから。
先生は、小学校で出会った先生が好きだったから。
絶滅危惧種は、たまたま受けた授業がきっかけ。
もう一度先生を目指したのも、ブリスベンでたまたま出会った人がいたから。

全部、外から来ている。

結局、そういうことなんじゃないかと僕は思っている。

夢は、頭の中を探して見つけるものじゃない。 何かをやってみた後に、後ろからついてくるものだ。

小学生の夢に、スポーツ選手や花屋さん、パン屋さん、先生が多いのは、子どもたちが普段そういった大人と関わることが多いからではないだろうか。

だから順番が逆なんだと思う。

「夢が見つかったから動く」んじゃなくて、 「動いたから夢が見つかる」。

そう考えると、子どもに対して大人がやるべきことも変わってくる気がする。

別に夢は探させなくていい。その 代わりに、出会いの数を増やしてあげればいい。

大人にできること

僕にはまだ自分の子どもはいない。
だから、日々の子育ての大変さを本当の意味ではわかっていないと思う。

その上で、元教員として、そして子どもたちにおにぎりを握ってきた人間として感じること。
子どもにとって大切だと思うことは次の3つ。

  1. いろんな場所に、連れて行ってあげる
    別に遠くじゃなくても隣町の公園でも、商店街でも、知らない駅でも。
    知らない景色は、それだけで子どもの中に何かを残すと思う。
  2. いろんな人に、会う場をつくる
    学校の先生と、親と、友達。子どもの世界はそれくらい狭い。
    農家さん、個人店の人、大人の社交の場などに出向いて「こんな生き方をしている大人がいるんだ」と知ることは、それ自体が選択肢になる。
  3. いろんな本を、読める場所をつくる
    無理に読ませなくても、ただそこに置いてあるだけでもいいと思う。
    本は、いちばん安く遠くまで行ける乗り物だと思うから。

どれも、その場で結果は出ないだろう。
連れて行ったその日に、子どもが「将来これになる!」というわけでもないと思う。

だけど、その種は心の中に小さく残ると思うし、何年か経って本人も忘れた頃に、ひょっこり芽を出すこともある。

焦らずじっくり

もし今、お子さんに夢中になれるものがないように見えても、 それは焦ることではないと思う。
そりゃ早いうちに将来の夢が見つかったら素晴らしいことだけど、そんな子は少数派な気がする。

まだ出会っていないだけ。

僕も、30年以上生きてきて、ようやく今の仕事にたどり着いた。
しかも、まだ途中。この先どんな場所へ向かっていくか僕もいまだにわかっていない。

だから、子どもが10年や15年で見つからないのは、当たり前のことだと思う。

焦って夢を持たせようとしなくていい。

その代わり、今日どこかに連れ出してみる。 知らない人に「こんにちは」と言わせてみる。 図書館で、本を一冊選んで借りてみる。

たぶん、そんなことでいいんだと思う。

子育てをされている人に尊敬を抱きながら、そんなことを考えていました。


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